ミューズ プレゼンツ

映像の1年

パンデミックが私たちのアートとの関わり方を変え、さまざまなアートの形に新たな関心が向けられることになるとは、誰も予想していませんでした。2020年、これまでにないデジタルへの移行が創造性に火を付け、前例のない規模でオーディエンスの目に触れるようになったことで、映像作品は新たな意味を持つようになりました。異例の1年の締めくくりとして、この革新的な芸術形式にとって重要なこの1年の瞬間を振り返ってみました。

最終選考に残った作品は、美術史、社会評論、自然、都市主義などの幅広いテーマを探求するために、動画作品が形を成し、それを利用することができる多様な方法を例示しています

今年は、データとマシン・インテリジェンスを見事なビジュアル・エクスペリエンスへと転換されたプロジェクトで幕を開けました。2月、ミューズはトルコ出身でロサンゼルスを拠点に活動するメディアアーティスト、レフィック・アナドル氏に、『Art of Perfection:Data Painting』の制作を依頼しました。これは、ロールス・ロイスの車のために過去10年間にグッドウッドで開発された、すべての塗装色がデジタルで複雑に絡み合ったものです。この近未来的な作品は、Frieze Los Angelesで公開された後、ロンドンのロールス・ロイス・グローバル本社で常設展示されています。

(レフィック・アナドル『Art of Perfection: Data Painting』2019年、 ロールス・ロイスのアート・プログラム、ミューズのコミッションにより制作。画像はRolls-Royce Motor Cars提供)

しかし、間もなく世界中に感染症が広まり、世界の多くの博物館が閉館を余儀なくされることになりました。そして、アートの世界がオンラインに移行していく中で、動画作品が脚光を浴びるようになりました。画面に主導された新しい私たちの存在により、芸術機関、ギャラリー、コレクターは懸命に、デジタル空間を介してアートにアクセスするための新しい方法を見つけようとしました。6月のブラック・ライブズ・マターの抗議行動を受けて、この積極的参画の精神は深く政治的共鳴を呈するようになりました。13の芸術機関が、アーサー・ジャファ監督の2016年の映画『Love is the Message, the Message is Death』を同時にライブストリーミング配信しました。この映画は、 媒体のレンズを通し、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティーを7分半に渡ってパワフルに検証しています。

 

(下:『Love is the Message, The Message is Death』(スチール)、2016年、ビデオ(カラー、音声)、7分25秒、The Artist and Gavin Brown's enterprise(ニューヨーク、ローマ)提供)

A still from Love is the Message, The Message is Death 2016, shows the reflection of a man looking into a phone through a window with distortion

この世界的な上映により、映像作品がいかに人種やアイデンティティーの問題を映し出すかについて、改めて議論が行われるようになりました。そして8月、アートの世界では、今度は歌手ビヨンセによってもう一つの黒人表現の大作が発表されました。ビジュアル・アルバムとして構想された『ブラック・イズ・キング』は、ブラック・ディアスポラとアフリカの伝統を称える大胆な映像アート作品として、瞬く間に注目を集めたのです。ビヨンセは、アーティストであり、映画監督であり、長年の協力者でもあるジェン・ナルーをはじめ、多くの黒人アーティストと協力して85分の映画を制作しました。アイデンティティやサブカルチャーを探求するシュールな映画を制作することで知られるナイジェリア系イギリス人のナルー監督は、アルバムの『Brown Skin Girl』と題する映像の監督に特別に起用されました。これはブラック・デビュタント・ボールをイメージした壮大な映画で、監督の故郷ペッカムで撮影されました。

「ビジュアル・アルバムとして構想された『ブラック・イズ・キング』は、黒人の離散とアフリカの伝統を称える大胆な映像アート作品として、瞬く間に注目を集めました」

Twin images - left a Portrait of Jenn Nkiru, right a still from "Black is King"

(左:ジェン・ナルー監督/Rosaline Shahnavaz © 2019; 右:『ブラック・イズ・キング』/Travis Matthews © 2020 Parkwood Entertainment)

また、8月は日常に美術館が戻ってきた月でもありました。年初から延期されていた待望のメディアアート展の数々が、ついに公開されたのです。その中には、ロールス・ロイスのアートプログラム、ミューズのサポートによりサーペンタインで開催された、中国のマルチメディア・アーティスト、ツァオ・フェイ氏による英国で初の大規模な展覧会や、テート・モダンでのスティーブ・マックイーン監督の大ヒット展がありました。テート・モダンでのこの展覧会では、受賞歴のある映画監督でターナー賞受賞者でもあるマックイーン監督の大作14作品を集め、アーティストとしての25年間を振り返りました。この回顧展では、マックイーン監督の活動にとって動画がいかに中心的なものであったかが、地域社会や歴史の強烈なポートレートを制作するという彼の継続的な取り組みとともに明かされました。

(ツァオ・フェイ『Blueprints』のトレーラー、サーペンタイン・ギャラリー提供)

その後、10月にはZabludowicz Collectionでアメリカの若手アーティスト、トゥルーリー・ホール氏の英国初の展覧会が開催され、動画はより奇抜な領域へと広がっていきました。ホール氏は、この元メソジスト礼拝堂を「エロティック・グロテスク」の楽しい家に変え、彫刻、絵画、ビデオ、オペラを組み合わせた精巧なインスタレーションを上演しました。来場者はこの奇妙な環境に足を踏み入れ、本物と偽物、ジェンダーとセクシュアリティの境界線を曖昧にした幻想的な物語に引き込まれていきました。

また、10月には、映像分野で活躍する若手アーティストを支援する、ミューズのフラッグシップ・イニシアチブ「ドリーム・コミッション」の最終候補者が発表されました。アート界を代表する審査員たちによる長い審査を経て、ソンドラ・ペリー、ベアトリス・サンティアゴ・ムニョス、マルティーヌ・シムズ、ジョウ・タオが選ばれました。最終選考に残った作品は、世界のアーティストを代表するだけでなく、美術史、社会評論、自然、都市主義などの幅広いテーマを探求するために、動画作品が形を成し、それを利用することができる多様な方法を例示しています

2021年春には、4人のアーティストのうち1人がロールス・ロイスから第1回のコミッションを受け、スイスのバイエラー財団美術館で展示される新しい映像作品を制作します。新しい年も、そしてその先も、映像という媒体が私たちの不確かな今を反映し続け、映像作品が心に響き続けることは間違いありません。

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限界を覆すアーティストとのコラボレーションを通じて創造力を育む先進的なビジョン。

ミューズ:ロールス・ロイスのアート・プログラム

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ドリーム・コミッションは、世界中の新進・中堅アーティストが制作した映像作品を称えます。

ドリーム・コミッション

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